素敵なすき間

母に心のこもった料理の作り方を聞くと「優しく、柔らかに、時間をかけてあげるのがコツよ」と教えられた。
どういう意味か聞こうとしたら、出来上がったばかりの二皿の千切りキャベツを出される。
「どっちが美味しいか食べ比べて見なさい」
ただの千切りキャベツ。味に違いなんて…ん？二皿めの方が一皿目より美味しい…
「でしょ？キャベツを優しく包み込んで、とんとんとんって切ってあげるの。早いだけなら調理ロボットでも出来るけど、心を込めるのは今のロボットじゃ無理でしょ？昔、ある製薬会社が半分は優しさで出来ている頭痛薬を販売していたの。何かを作る時は優しく気持ちを込める事がコツよ。気持ちをぎゅ～っと込めすぎると、料理も貴方も重いって思われちゃうからね」
そう話しながら、母はトンカツ用の肉に包丁で切れ込みを入れていく。
「これは筋切り。これで出来た隙間に愛や優しさを込めると口の中でじわ～っと気持ちが伝わるわよ」