ロングサマーバケーション

2
1

帰りの列車の中で忘れ物に気付いて駅に戻ると、お土産に買ったチーズは暑さで伸びていた。
それだけじゃない。入れ物のプラスチックも柔らかくなり伸びていたし、ベンチの上の猫もだれたみたいに体を伸ばしていた。
でも一番驚いたのは、あまりの暑さで「夏休み」まで伸び出した事だ。

敬老の日にはまた婆ちゃんの家に泊まる事が出来た。まだ夏休みだからだ。今度はチーズは忘れなかった。
ハロウィンの仮装だっていつもより凝ったのを作れたし、その後も好きな子を誘って毎日紅葉狩りデートが出来た。まだ夏休みだからだ。
何だかずっとあの日の列車に乗ったまま、真夏のレールの上を静かに進んでるような気持ちになる。
きっと「冬休み」とくっ付く程伸びたんじゃないだろうか。

初雪のなか僕達は、寒さでレールの如く縮んだ夏休みと、冬休みとの間に登校日という"継ぎ目”を見つけた。

そうして僕達の日常は、ガタンと音を立て元に戻った。
ファンタジー
公開:23/11/23 01:33
更新:23/11/23 03:43

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容