クラフトアートビール

「クラフトアートビール観に行かない？」
「行く行く」
クラフトアートビールは醸造所のこだわりが観えるから好きだ。
ビアホールは満席だった。ジョッキが配られ、巨大なサーバーが現れる。スタッフがコックを捻ると、流れ出たビールが宙を走った。キラキラとアートを描いて飛び回り、次々とジョッキの中に舞い降りていく。
そしてビールは私達の上で字を書いた。
Will you marry me?
歓声が上がる。彼の掲げたジョッキにビールが降り注いだ。注目の中一気飲みする勢いは、途中からゆっくりと味わう速さに変わった。ジョッキを置き、一息ついて、彼は私に微笑みかける。
「これからもずっと、君とビールが飲みたい」
ジョッキに口を付けた時の情けない緊張感はなく、キリッとした良い顔だった。
ビールもプロポーズも、勢い任せは勿体無い。
良くわかってるじゃない。
自分と彼のジョッキを打ち合わせる。会場中に乾杯が響いた。