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「ああ!」と叫んだ途端に目が覚めた。口の中にはビールの強烈な苦味がまだ残っている。「今夜もダメだったか。いつになったら君に会えるのか…」私は空き缶で一杯のゴミ袋にもう一缶を加えた。味に応じた記憶に入り込めるビールがあるという噂を聞いて、すぐに取り寄せた。しかし、妻と苦しくも最後の外食となったあの日にどうしても戻れなかった。次の日、日課となったビールを開け一口飲んだ途端、ギョッとして少し吹いてしまった。鼻から伊予柑の爽やかな香りが抜けていき、甘さが口の中に広がった。一日一回だけの機会を無駄にしたと思った所で意識が遠のいた。「あなた、ねえ。私の話聞いている?」ふと前を見ると妻がテーブルに座っていた。「どうしたの?」「いや、そうか、こんなにも甘く楽しい夜だったのか…」妻は笑って「変な人」と言った。たわいのない話をしていると酔いが回ってきたのか段々ぼんやりしてきた。「待ってくれ、まだ話たいこ…」
その他
公開:23/11/19 22:22
べんきょうちゅう。
ショートショートガーデン コンテスト クラフトビールコンテスト 【ハーフパイント賞】
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