Cherry blossom dream

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桜の木の下で、缶ビールを開ける。シュワシュワという音とともに、白い泡が溢れ出す。その泡はどんどん広がって、気がつくと僕は泡でできた雲に乗って空に浮かんでいた。よく見ると、この雲はそこかしこの桜とつながっている。遠くの方では、桜色の服を着た人々が談笑しているのが見えた。
「おや、お客さんが来たようだ」
白い髭をたくわえた老人が、ふわふわとこちらに漂ってくる。
「桜の宴会は初めてかい?まあ、一杯やりなさいな」
僕の手の中にあるグラスに向けて、おじいさんが瓶から飲み物を注いでくれた。薄桃色の液体の底から、光り輝く泡が上がってくる。
「桜の麦酒さ。今年はかなり上出来だな」
麦酒を飲んだ僕はほろ酔いになり、いつの間にか眠りに落ちていた。
目を覚ますと、辺りは夕暮れになっていた。同じ桜の木の下、僕の缶ビールはどこかに消え、代わりにグラスに入ったビールがあった。その中には、桜の花びらが一つ浮かんでいた。
その他
公開:23/11/19 20:16
更新:23/11/19 20:33

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