大人の味

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「もういいかい」「まぁだだよ」
かくれんぼが楽しくて、小学校から帰るとランドセルを家に捨てるように置いて、一目散に公園に向かい日が暮れるまで遊んだ。
夕日と同じぐらい顔を真っ赤にした母親の途切れることのないお説教をラジオにして、宿題に取り組むまでが僕の日課だった。
宿題を終える頃に帰宅する父は、首にかけた手拭いで汗を拭いながら、「しょうがない奴だな」と笑って僕の頭をがしがしと撫で、母親が用意した枝豆をつまみにビールを美味そうに飲む。
父親に内緒でこっそり口にした事があるビールは飲めたものじゃなくて、美味しそうに飲む父親の舌は働き過ぎておかしくなったんだと思っていたけれど、いざ自分が父親と同じ年齢になるとビールばかり口にしている。
プルタブを開けてグラスにビールを注ぐ姿を不思議そうに見つめる我が子を見て、ふと昔を思い出してしまった。
舌に感じる苦味はほろ苦くて、ほんのり甘い。
公開:23/11/19 23:44

宮川珠実( 京都 )

会社員です。書いてみたいなぁという気持ちをやっとこさ行動に移しました。
想いのままに書き連ねていて読みづらさがあると思いますが、よろしくお願いします。

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