廻る素足

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 立体的な弧を描く年代・太さの変わる素足と、その質感をなぞる赤黒の背景。題名は「廻る素足」。
 暇さえあればギャラリーを覗く友人は著者、ヴィルヌーヴの想いを思いの丈に語った。僕はその中で出てきた「耐え難い恐怖の連鎖」というひと言に些かな好奇心を傾かせた。安い酒場で聞く話ほど無駄な事はないと思ったが、友人の盲信に躍る目の星は真実を物語っており、唆られるものがあった。
 果たして、それは盲信で塗り固められた絵画ではなかった。静物画に躍るような狂気が狂躁し、気圧され磔になった僕を踏み荒らしていく――画家の壊れた最後の自我が、そこには映し出されていた。
 人の一生を唾液と舌でかき混ぜる友人にも感謝しなければなるまい。「絵画は近くで心情を、遠くで模倣された美を飾る」と言っていたが、それは本当だったのだから。

 ところで、老人の無数の皺をガラス片で切りつけて表したのにはどんな意味があったのだろうか。
ホラー
公開:23/11/19 23:36

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