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 高校時代、片想いしていたあの子に会える。胸を踊らせ参加した同窓会。会場のビアパブに足を踏み入れると、さっそく旧友が手招いた。その先に座る彼女を見るや、僕は腰を抜かしそうになった。あろうことかそこには、あの頃のままの君がいた。

 会も半ばに差しかかった頃、ようやく君に声をかける機会がやってきた。
「やぁ」
「久しぶりだね」
 あの頃のままの笑顔が胸をくすぐる。
「何飲んでるの?」興味津々の君。
「クラフトビールさ。個性的な味わいが好きでねぇ」
 僕は手にしたグラスを揺らしてみせた。
「君もどう?」
 すると君は澄んだ目を向け、微笑んだ。
「わたし未成年だから。コーラにするね」
 そういうことか……。君の年齢は当然あの頃のまま。未成年という響きに、ただ戸惑うばかり。そんな僕を見て君は言った。少年少女の頃には、味わったことのない甘酸っぱい声色で。
「また、おとなになったら一緒に飲みましょ」
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公開:23/11/19 08:48
恋愛 同窓会 男女 クラフトビール

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