ことのはビール
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「ことのはビール」が、私の元に届いた。数年前、クラフトビール界を騒然とさせた「声を記録するビール」。ある醸造所で偶発的に作られ、ニュースになったことを覚えている。以来、オリジナルビールに言葉を添えた贈り物として大人気になった。
送り主は、五年前に急逝した父。流行りものが好きで、いつの間にか注文していたらしい。中身はウイスキー樽で熟成させたバレルエイジドビールだ。
ビール苦いもの、とあまり好んで飲まない私だが、開栓してみてその甘い馥郁たる香りに驚いた。深みのある褐色の液体を口に含む。どっしりした味を感じた次の瞬間、「いつもありがとう。また一緒に飲もう」張りのある声がはっきりと聞こえた。
父の周りにはいつも人がいて、賑やかだった。その背中を見上げて育ったが、果たして並び立つことはできたのだろうか。
耳朶に残る声の余韻に浸りながら、グラスを傾ける。琥珀色の水面がやけに眩しく輝いて見えた。
送り主は、五年前に急逝した父。流行りものが好きで、いつの間にか注文していたらしい。中身はウイスキー樽で熟成させたバレルエイジドビールだ。
ビール苦いもの、とあまり好んで飲まない私だが、開栓してみてその甘い馥郁たる香りに驚いた。深みのある褐色の液体を口に含む。どっしりした味を感じた次の瞬間、「いつもありがとう。また一緒に飲もう」張りのある声がはっきりと聞こえた。
父の周りにはいつも人がいて、賑やかだった。その背中を見上げて育ったが、果たして並び立つことはできたのだろうか。
耳朶に残る声の余韻に浸りながら、グラスを傾ける。琥珀色の水面がやけに眩しく輝いて見えた。
ファンタジー
公開:23/11/19 17:59
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