山賊とクラフトビール

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 ビール瓶の王冠を宝物のように集めていた幼い心も今は昔。ただの蓋でしかないそれを指先に弄びながら瓶を煽ると、ほのかな甘味を連れた苦味が炭酸を纏って俺の喉を襲撃する。
「コップ使いなよ。山賊みたいな飲み方しないでさ」
「今日の俺は山賊なの」
 山賊に対する勝手なイメージに倣いながら、ガハハと笑い声を上げると、彼女も一緒にガハハと笑ってくれた。
「親分もいかがです?」
 山賊の親分と化した彼女に栓抜きを渡すと、「うむ」と彼女は瓶を開けて直に煽り、再びガハハと山賊の笑みを見せた。
 指先に王冠を弄ぶ。あの時の心は、もしかすると今もここにあるのかもしれない。
 こんな日常が続けば良い。彼女と共に、くだらない日々をこれからずっと作っていきたい。
 親分がいつもの彼女に戻るその瞬間を今か今かと待ちわびているポケットの中の指輪の熱を感じながら、俺は宝を狙う山賊の気分で己を鼓舞し、再びグイッと瓶を煽った。
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公開:23/11/17 17:28
更新:23/11/17 20:40

あずきヤス

お話を書くのが好きです。
いつかお話書きを仕事にしたいです。

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