いつか一緒に

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私はこの店を出たことがない。
チクタクチクタク。
私もそのひとつ。
お客様はたくさん訪れる。
私はその一人一人の腕を見ながら、想像してしまう。
その腕にまかれ、外へ出る日を夢見てしまう。
話しに聞くイチョウ並木はどんなだろう。
街は騒々しいけど、そこはとても静かで風の音が聴こえるらしい。
店主はよく、クラフトビールを飲んでいる。
好みの時計とクラフトビール。
コレクションした自分好みを追求したいのだそうだ。
ここに訪れるお客様とも気が合うらしい。
しばらくおしゃべりをし、時には一緒にクラフトビールを飲む。
そうして、皆ひとつひとつ時計をゆっくり眺めていく。
ある日、素敵なお客様が私を手に取り、顔をなでて指で針をなぞっていた。
しばらく腕につけると、また元の場所に置いた。
また来るだろうか。
私があの腕につかまり、日の光を浴びる日は来るだろうか。
空を見上げる日は来るのだろうか。
ファンタジー
公開:23/11/17 14:49
更新:23/11/17 15:36

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