ビールジョッキー

親父は愛媛が誇る伝説のビールジョッキーだった。ジャパンビールカップで斜行してきた他のジョッキーと接触し、落ビア。粉々に割れた親父のジョッキー魂は戻ることなく引退となった。今は松山の小さなブルワリーでビアを育成している。黄金色のフルボディに苦味のあるビアは根強い人気だ。
今日俺はジョッキーデビューする。運ぶのは、父の育てたビア、デデだ。
「最高の仕上がりだ。あとは頼んだぞ」
「任せとけ」
プシュッ！
ステイオンタブが開いて各ビア一斉にスタート！先頭をいくのは北海道育ちの北の産地ブラック！このまま逃げ切るか？いや後ろから鋭い切れ味で4番人気のデデがやってきた。ジョッキーはユニークなスタイルで知られる松山だ。しかしまだ苦味が足りない！届くのか？おおっと、これはホップが効いたIPA！力強いフルボディだ！松山初ジョッキーで一着！これは美味い！
「乾杯！」の声援が飛び交う。俺は勝利の美酒に酔いしれた。