とりあえず

3
4

仕事帰りに新しくできた居酒屋に立ち寄った。
「へい!いらっしゃい!ご注文は」
やけに威勢のいい店員だ。
「とりあえずビ…」
バシッ!いきなり顔を叩かれ、何が起きたのか分からない。
「ビンタ入りました!」
店員の声に我に返る。
「僕が言ったのは、とりあえずビ…ハックション」
くしゃみを連発し、鼻水が滝のように流れ出てくる。
「鼻炎入りました!」
「とりあえずティッシュくれ」
おしぼりを渡され、顔を拭くと少しサッパリする。
「だからさ、とりあえずビ…」
奥から美人がやってきて横に腰掛けた。しかもビニキ姿だ。注文とは違うけど、もうこれで、いやこれがいい。諦めかけた時、黄金色の液体を旨そうに飲んでる男を見つけた。
「それ、どうやって注文したんだ」
「ぜひともビール」
そうか!とりあえずが良くなかった。男に感謝する。
「ぜひともだちになってください!」
「とりあえずなら」
僕らはとりあえず乾杯した。
公開:23/11/17 07:07

むう( 地獄 )

人間界で書いたり読んだりしてる骸骨。白むうと黒むうがいます。読書、音楽、舞台、昆虫が好き。松尾スズキと大人計画を愛する。ショートショートマガジン『ベリショーズ 』編集。そるとばたあ@ことば遊びのマネージャー。

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容