クラフとビール

「おい、何やってんだよ」
「いや、わざとじゃないんだよ。気付いたらクラフが」
　飼っているクラフが誤ってビールを飲んでしまった。決して僕が、わざと飲ませたわけではない。
「どうすんだ？　このままってわけにもいかないだろ？」
「でも管理局に電話したら、クラフは……」
「そんなこと言っても、俺らの命には変えられないだろ？」
　クラフとビールの相性が最悪というのは、飼うときに忠告を受けた。しかし、クラフがビールを飲んでしまうとどういうことが起こるのかは、教えてもらえなかった。噂では、凶暴化し、人間を襲うこともあるなんてことも言われているけれど。　　
　クラフがビールを飲んでから30分が経過したが、尻尾が青くなったこと以外、何も変化はない。
「凶暴化するなんてさ、迷信だったりして」
　結局僕は、迷信である可能性に賭け、何もせずに寝た。
　僕はまだ知らない、朝起きると僕がクラフになっていることを。