夕陽ビール

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「今日の一杯はきっと最高のものに違いない」
俺はそう確信すると定時きっかりに会社を後にした。
クラフトビール店『空層(くうそう)』には既に数人が列を成しており、暑い中入店まで小一時間程待たされた。
その間に夕間暮れの空は漆黒を纏っていく。
(はたして間に合うかな……)
入店し顔馴染みのマスターと目を合わせると彼はうんと頷いた。
『本日の夕陽の美しさは近日観ない程でしたから、それはもう濃くて澄んだオレンジ色をしていますよ』
そう言いながらいくつか並んでいるビールサーバーからジョッキに丁寧にビールを注ぎはじめた。
一層めは濃いオレンジ、二層めはそれよりも少し薄いオレンジ色をしており、それはグラスのなかで見事なグラデーションとなっていた。
「今日のビールは一段と綺麗だ…」
マスターはふふっと笑うと八分目まで淹れたビールの上にレードルで優しく仕上げの泡を乗せた。
『昼間獲れたフワフワの入道雲です』
ファンタジー
公開:23/11/18 09:31
更新:23/11/18 22:04

ことのは もも。( 日本 関西 )

日本語が好き♡
18歳の頃から時々文章を書いています。
短い物語が好きです。
どれかひとつでも誰かの心に届きます様に☆
感想はいつでもお待ちしています!
宜しくお願い致します。

こちらでは2018年5月から書き始めて、2020年11月の時点で300作になりました。
これからもゆっくりですが、コツコツと書いていこうと思います(*^^*)

2019年 プチコン新生活優秀賞受賞
2020年 DJ MARUKOME読めるカレー大賞特別賞受賞
2021年 ベルモニー縁コンテスト 入選

カントー地方在住
 

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