インディア・ペールエール 遠雷

2
4

溢れるほど籠いっぱいのホップを持つ彼女。
それを微笑みながら、オレにぶち撒ける。
躰に当たったホップが、シュワシュワと音を立てながら弾け、ビールになる。
たちまち一面はビールの海。
オレは沈み、もがく。
彼女の声が微かに聞こえる。
「私が悪いの」
そう告げ、オレがよく知っているヤツと腕を組み、消えてしまった。  

遠雷が聞こえる。
暫くすると不規則に雨戸を叩く弱い音が、規則正しい雨音となり、オレの意識が戻って来る。
起き上がると、がらんどうの部屋に、1本の缶ビール。
ラベルには、横向きで微笑んでいる彼女に似た女神。
くるっと女神の絵柄を裏にして、プルトップを開ける。
プシュ。部屋に音が響き、ホップの芳醇な香りが、部屋を包み込む。
窓から闇の景色を割くような小さな電影。
それを見つめながら、ビールを口にやる。
遠雷のようなピリリが走り抜け、渇いた心と喉に、やるせない苦い味がした。
恋愛
公開:23/11/17 23:30
更新:23/11/18 11:22
クラフトビール

さささ ゆゆ( 神奈川 )

最近生業が忙しく、庭の手入れが疎かな庭師の庭でございます。

「これはいかんっ!!」と突然来ては草刈りをガツガツとし、バンバン種を撒きます。

なので庭は、愉快も怖いも不思議もごちゃごちゃ。

でもね、よく読むと同じ花だってわかりますよ。


Twitter:さささ ゆゆ@sa3_yu2





 

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容