黄金海に眠るもの

4
3

自宅玄関の扉は黄金海に繋がっている。
僕は冒険心と好奇心を鞄に詰め込んで、扉を押し開いた。
「やっと来たか。さぁ、早く潜水缶に乗りたまえ」
柑橘臭漂う海上で、僕の帰りを待っていた髭もじゃの彼はヒック缶長。そして、僕達は黄金海に挑む冒険家なのだ。
差し出された手を掴み、ヒック缶長と共に潜水缶に乗り込んだ。ぶくぶくと発砲し、海底を目標にゆっくりと潜水する。
「そろそろだ」
鮭の大群も、アミノ珊瑚のコロニーも姿を消し、暗闇と静寂に包まれた頃、ヒック缶長は窓の外を指差した。
「どうかね、美しかろう」
壮麗だった。潜水缶のライトは海底に沈んだ黒い影を黄金に明かした。
「見つけたぞ、海中遺跡だ」
僕達は感極まり涙を流して、ひっくひっく泣いた。お互いの功績を称えハグを交わすが、夢は幻。
潜水缶を叩く大きな音と、妻の怒鳴り警報音が缶内に響いた。
「なにあんた玄関で寝てるのよ」
「あれ、海中遺跡は?ひっく」
ファンタジー
公開:23/11/18 20:00
更新:23/11/18 20:41
クラフトビールコンテスト

社 真秀

空想世界を広げる為書き連ねます。アドバイス、ご指摘いただけると幸いです。

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容