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「うーん、すこしフルーツっぽい?」
わたしがそう言うと、パパは笑っていた。
ほんとうはビールの味はまだよくわからなかったけれど、なんとなく聞いたことのあるような感想を言ってみた。
昔からそうだった。パパが新聞を読んでいたらとなりで絵本を広げてみたり、パパがコーヒーを飲めば一緒になってコーラを飲むような子どもだった。すこしでも大人の仲間入りがしたかったんだと思う。
二十歳の誕生日、パパがビールの飲み比べセットを買ってきた。ママは呆れていたけれど、どうやらパパはわたしとお酒を飲むのをずっと楽しみにしていたらしい。はじめて飲むビールはなんだか苦くて、不思議な味がしたけれど、正直にそう言うのが悔しくて、つい大人びたことを言ってしまった。
「うそつけ、まだわからんやろ」
そう笑うパパの顔があまりに幸せそうで、わたしはまた、すこしだけ悔しかった。わたしの精一杯は、パパにはまだ及ばないらしい。
わたしがそう言うと、パパは笑っていた。
ほんとうはビールの味はまだよくわからなかったけれど、なんとなく聞いたことのあるような感想を言ってみた。
昔からそうだった。パパが新聞を読んでいたらとなりで絵本を広げてみたり、パパがコーヒーを飲めば一緒になってコーラを飲むような子どもだった。すこしでも大人の仲間入りがしたかったんだと思う。
二十歳の誕生日、パパがビールの飲み比べセットを買ってきた。ママは呆れていたけれど、どうやらパパはわたしとお酒を飲むのをずっと楽しみにしていたらしい。はじめて飲むビールはなんだか苦くて、不思議な味がしたけれど、正直にそう言うのが悔しくて、つい大人びたことを言ってしまった。
「うそつけ、まだわからんやろ」
そう笑うパパの顔があまりに幸せそうで、わたしはまた、すこしだけ悔しかった。わたしの精一杯は、パパにはまだ及ばないらしい。
その他
公開:23/11/17 21:55
Twitter(X):@yoshida__6
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