華酒の典

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『ビールと結婚しました』
ビール職人を志し修行に出た友人から、予想の斜め上の招待状が届いた。
念願の工房を構えた比喩かと思いきや、まさか本当にビールと挙式するとは。何と言っていいか分からない苦い顔で、ビアガーデンの披露宴に参列した。
「久しぶり! 来てくれてありがとう」
「ああ、うん……け、結婚おめでとう」
幸せオーラ全開の友人に当たり障りない挨拶を返す。既に出来上がっているのか、はたまた新婦に見惚れているのか、真っ赤な顔で微笑む視線の先には、隣の席と言うかテーブルに置かれた細身のビール瓶。首にリボンを結び、キャップには花嫁のベールがかけられている。
「修行先で一杯やってから惚れ込んじゃってさ。見た目通り無口だけど、中身は抜群なんだ」
瓶のベールを優しく持ち上げ、口付ける友人。傍目には単なるラッパ飲みだ。
「今日はたっぷり飲んでってくれ」
ゲストテーブルに居並ぶ缶や瓶が、一斉に封を切った。
その他
公開:23/11/14 20:29
クラフトビールコンテスト

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞

いつも本当にありがとうございます!

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