恋人と行く、ペア旅行チケット

『おめでとうございます。厳選なる抽選の結果、貴殿に「恋人と行く、ペア旅行チケット」が当選した事をお伝えいたします。』

その手紙を受け取った私は思わずガッツポーズ。懸賞も出してみるものだな。
彼と一緒に住み始めて早５年。一緒に出掛ける事は多いが、旅行に行った事はない。
最近の彼は仕事で疲れ気味の様子。旅行はいいリフレッシュになるだろう。
私は仕事から帰ってきた彼に、受け取った手紙の人間用のものを渡す。
「へ～、『愛犬と行く、ペア旅行チケット』か…広いドッグランもあるんだ。面白そうだね。今度の休み、早速行ってみようか？」
嬉しそうな彼に私は「わんっ！」と答える。
「てか、こんなのいつ応募したっけ？」と首を傾げる彼を私が遮る。
私が出した懸賞だと気づかれないよう誤魔化す。
犬の私では、彼がお爺ちゃんになるまで一緒にいられない。
だからお爺ちゃんになっても思い出してもらえるよう思い出を作るんだ。