ビール探偵の誤算

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「今回は難しい事件ですな、クラフトさん」
「まったくです警部」
部屋の中央には、頭から血を流した男の死体が横たわっていた。
「でも、現場にはわずかながら手掛かりが残されています」
男の傍らには、底が丸く窪んだ大きな金ダライが置かれている。
「心配いりません警部。この私の琥珀色の脳細胞で、必ず事件を解決してみせます」
クラフトは缶ビールを取り出すと、一気に飲み干した。いかなる事件もビールを飲んでたちまち解決するその姿から、彼は別名”ビール腹”と呼ばれている。
「……警部」
「何かわかりましたかクラフトさん」
「私はとんでもない勘違いをしていました」
「勘違い? どういうことですか」
「ビールだと思ってノンアルコールビールを買ってきてしまいました」
「今回も迷宮入りか……」
「帰りにコンビニ寄ってくか」

私立探偵エール=クラフト。彼の琥珀色の脳細胞は、アルコールが入らないと一切働かない。
ミステリー・推理
公開:23/11/15 21:16
クラフトビール

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