誕生日にはラガ束を

僕の彼女は無類のビール好きだ。誕生日に欲しいものを聞くと「ビア樽！」と答えるんだから。
さすがにビア樽は買えなかったので、代わりにビールを９本プレゼントした。
「これ、クラフトビールでしょ？分かるよ。麦とホップの中にバラの香り…ん～、最高！」
『そこまで褒めてくれるなんて作った甲斐があったよ。君の誕生日にはこれを渡すべきだって皆に言われたんだ』
「皆に感謝ね」
『本当だよ。皆、僕の背中を押してくれたんだ。そのビール、君にとってはラガーでも僕にとってはエールなんだ』
僕はさらに９９本も同じビールを束で取り出し、彼女へと渡した。
『バラの花言葉って知ってる？本数で意味が変わってくるんだ』
「知ってるよ。遠回しなプロポーズだね」
『そりゃそうさ。酒の回りを遠回しにしなきゃ、君は僕の告白を酔ったふりしてはぐらかすだろ？』
彼女は僕にビールを２本、渡してきた。
「私はとっくに、アンタに夢中だっての」