知るということ

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「普通が良いんだよ!」
 俺は由希子が連れてきた男を怒鳴りつけた。
 由希子は普通の男を連れて来れば良かったのに。
 コイツはピアスを付けてくるわ、Yシャツはいいとしても胸元をザックリ開けてるわ、で。
 さらに手土産がクラフトビール? 俺は慣れ親しんだビールしか飲まないんだよ。
 ほら見ろ、ビールのパッケージも何だかチャラチャラしていて、まさにコイツだ。
 この日は、由希子共々帰らせた。
 夜になり、晩酌でもするかと思ったが、なんと家にストックのビールが無い。
 仕方なく、クラフトビールとやらを飲むことにした。
 ほら見ろ、のどごし重視の一般的なビールと違って、何だか妙な味がする。
 でもその味わいは不愉快では決してなくて、芳醇な香りと旨味、飲めば飲むほど癖になる。
「そっか、ちゃんと中身を見てはいなかったな」
 そうポツリと呟いた俺は由希子から届いたメールに返信した。次の挨拶の日取りだ。
その他
公開:23/11/11 11:42

伊藤テル( (日本) )

株式会社コルクにて『変人作家の担当』電子書籍出版
(デジタルノベルコンテストvol.1 受賞)
第2回いがらしみきお賞 受賞(詩誌・ココア共和国にて)
第2回カクヨム短歌・俳句コンテスト 短歌部門 佳作
新潟日報文学賞 詩部門 選外佳作
第15回「1ページの絵本」 佳作
小さな小さな文学賞vol.2 優秀作品
BluemingBox「実熊瑠琉」 審査員特別賞

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