泡に弾けた約束

8
2

お前に振り回されっぱなしの人生だった。半世紀生きてきた時間のうちのほとんどをお前と過ごした。良く一緒にクラフトビールを飲んだよな。そういや、あの時も飲んでたな。新しい事業を立ち上げるから手伝えってお前がいきなり言った。
それから一緒に会社を立ち上げたあの時も、会社の経営状況が良い時も悪い時も、小さなアパートの部屋でお前とクラフトビールを飲んだ。
「約束だ。成り上がったらまた一緒に飲もうって言ったよな。まあ約束した高いシャンパンじゃないけどな」
そんな独り言を墓に向かって言う。お供え物は、お前の好きなクラフトビールだ。二缶あるうちの一つを手に取り、蓋を開けて持ってきたビールジョッキに注ぐ。もう一缶は、墓に供える。
「乾杯」
ふいに涙が溢れてくる。
会社の経営は順調。今は高いシャンパンも買えるようになった。でも何でだろうな。お前と飲んだクラフトビールより美味い酒なんて、この世になかったんだ。
公開:23/11/10 20:12
クラフトビール

富本アキユ( 日本 )

カクヨムにも小説を投稿してます。
Twitterは@book_Akiyu

・SSG投稿作品1500作品突破

・作詞を担当
https://youtu.be/OtczLkK6-8c

・葉月のりこ様YouTubeチャンネル『ショートショート朗読ボックス』~ショートショートガーデンより~の動画内で江頭楓様より『睡眠旅人』を朗読して頂きました。

https://youtu.be/frouU2nCPYI

・魔法のiらんど大賞2021小説大賞。大人恋愛部門「彼女の作り方」が予選通過

〇サウンドノベルゲーム版作品(無料プレイ可)

ブラウン・シュガー
https://novelchan.novelsphere.jp/38739/

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容