旅する雲

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朝の空にはビールの泡の様な小雲が数個浮かび、鳥が飛んでいた。
畑仕事をしながら後継者不足で悩んでいる老人が、空を見上げながら、ビールが飲みたくなる様な雲だなァ、気晴らしにビール工房に飲みにいこうかと独り言を言っていた。
その同じ空を、夢が叶わず部屋に閉じこもっていた青年も見ていた。
あの雲を飲んだら、きっと美味しいだろうな、久し振りに外出して飲みに行こうかなァと呟いた。

数日後、青年は村にあるビール工房を訪ねた。その工房の裏山にはいつか見た鳥達も楽しそうに飛んでいる。
偶然老いた農夫も来ており、二人は飲み始めると同時に、泡が雲の様に柔らかいと叫んだ。
それをきっかけにお互いに話をする様になった。

数カ月後、老人が青年に一緒に農業をしないかと誘うと、青年は嬉しそうに頷いた。
翌朝、空には何かを飲み込んだ様な大きな雲が浮かび、側には鳥の大群が集まり、
いつの間にか皆で大空に消えて行った。
ファンタジー
公開:23/11/10 16:13

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