半々屋

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世の中不思議なもんで、うちの商品は半々でございとぬかした日にゃあ、ふた昔前なら『そんな怪しい品が買えるか』と門前払いを食ったんですが、今のお人は『正直で結構だ』と仰る。
商取引法が厳しくなって、『十全』だの『九分九厘』だのは不当表示にあたるそうで。半信半疑なら半分は信が置けると歓迎される始末。時代の流れってのは全く、いや半々でおかしなもんですよ。

こないだのお客なんて、わざわざ半死半生を買いに来られましてね。
さすがにこっちも蒼褪めて『そんなおっかねえもん止しなさい』と忠告したんですが、『なに半分助かるなら儲けもんだ』と上機嫌で帰っちまいました。
どうやらそのお客、助かる見込みが万に一つの大手術を控えてたらしく、お蔭で手術は無事成功、今もぴんぴんしてますよ。

へえそりゃ良い、儂も半分にあやかろうって?
だめだめお客さん、うちは半々の店ですんでね。私の言葉も話半分に聞いといてくれないと。
ミステリー・推理
公開:23/11/13 14:16
月の音色 テーマ:ハーフ&ハーフ

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
前職は花屋。現在は葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書き(もどき)をしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.12執筆参加
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞。2022年6月アンソロジー出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞受賞

いつも本当にありがとうございます!

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