山茶花

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 山茶花の花に、薄らと雪が積もっている。
 まるで化粧をしているかのように見える。
 街路樹の一本だけが山茶花なのだ。後は銀杏なものだから、花の紅さが余計に目立つ。
 いくつかの花は道路の上に落ちている。戯れに一つ取り上げてみると、サラサラと音が聞こえた。
 聞き違いだろうかと思い、花を耳の近くまで持って行く。軽くふれば、やはりサラサラと音がする。
 いくつか別の山茶花も拾ってみたのだが、やはり耳元でふると、同じような音がした。
 面白いと思って、最初に拾った山茶花を宿屋に持ち帰った。その日の夜は、山茶花から聞こえるサラサラという音を聞きながら寝た。
 翌日、頬に冷たさを感じて目覚めた。真横に置いたはずの山茶花は消えていて、水たまりができている。そこに頬が触れていたのだ。
 宿屋を出て、昨日花を拾った場所へ行ってみたが、山茶花はどこにも見当たらなかった。
公開:23/11/13 06:59

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