飲み干す失恋

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「今どき珍しい」ショートボブの彩は恵に茶化されカウンターに並んだ。
「持ってきた?」「コレ…」頼まれた物を恵に渡す。
「マスター、この娘に失恋ビールお願い」「え」彩は耳を疑う。
「この店はその人の失恋をビールにしてくれるの。失恋は切るんじゃなくて飲み干すの」元彼から貰った指輪を店主に渡した。
「様々なビールの調合で表現するんです。その為には思い出の品が必要でして」と店主は奥に消えた。
「恵、よく来るの?」「失礼ね。たまによ」と笑い合うと、ハーフグラスのビールが出てきた。戸惑いながら一口。うーんと頷きながら恵は飲み干した。
「飲める…けど好きじゃない」「そういう事よ。彩」
我に返り店主に謝る。「クラフトには無限の個性があります。一期一会自分に合った味に出会えると幸いです。恋愛も」と店主は微笑む。
「失恋ビールは不味くて正解なの。私の時は未練が多くて…」
「多くて?」

「美味しかったのよ」
SF
公開:23/11/13 00:13

吉田図工( 日本 )

まずは自分が楽しむこと。

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