二号酔い

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「二号酔いですな」
久しぶりの飲み会で羽目を外し過ぎた翌日、頭痛と吐き気でうずくまる俺に、医者が奇妙な診断を下した。
「……二日酔いの間違いでは? あと飲んだのは日本酒二合じゃなく、ビールの中びん二本」
「つまり浮気飲みされたんでしょう。二号ビールに手を出すから、いつものコレが焼き餅焼いとるんです」
小指を立てて『コレ』を示す医者の、白衣の下のビール腹に軽く殺意を覚えつつ、思い当たるフシもなくはない。
夏じゅう飲んでいた某メーカーのクラフトビール。よく言えば安定の、悪く言えば目新しさのない『いつもの』に、秋の訪れと共に飽きが来ていた。
「まさかと思いますが、今後別のビールを飲む度にこのザマですか……」
「個性が売りのクラフトビールは我も強い。酒の切れ目が縁の切れ目で禁ビールするか、迎えビールでヨリを戻すかですな」

気休めにビール酵母サプリを処方されたが、もちろん何の解決にもならなかった。
その他
公開:23/11/12 19:50
クラフトビールコンテスト

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
前職は花屋。現在は葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書き(もどき)をしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.12執筆参加
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞。2022年6月アンソロジー出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞受賞

いつも本当にありがとうございます!

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