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シトリン、琥珀、ルビー、ブラックオパール、鉱物や宝石をあしらった美しいパッケージのクラフトビールに目が止まった。
普段は飲まないのに、思わずその一つを手に取っていた。
ビールを敬遠していたのはビール好きの父のせいだ。ぶつかって石油ストーブの火が消えるほどに酔い、母に注意されてはガハハと笑う。そんな姿を子供の頃に何度も見せられて、ビール好きになる方が稀だと思う。それがビールの苦味と相まって好きになれなかった。
恐る恐る缶を開けると柑橘系の香りが弾けた。
「え、良い香り」
グラスに注ぐとシトリンーー黄水晶がカチンカチンとグラスの底に沈み、泡を出しながらビールに溶けた。たまらず一口飲むと苦味も少なく、口当たりがいい。
「これ、好きかも」
小さな発見に酔っていたら、母から札幌はもう雪が降ったとメッセージが来た。歳をとって酒の量が激減した父のガハハと笑う姿が今は何だか懐かしい。
普段は飲まないのに、思わずその一つを手に取っていた。
ビールを敬遠していたのはビール好きの父のせいだ。ぶつかって石油ストーブの火が消えるほどに酔い、母に注意されてはガハハと笑う。そんな姿を子供の頃に何度も見せられて、ビール好きになる方が稀だと思う。それがビールの苦味と相まって好きになれなかった。
恐る恐る缶を開けると柑橘系の香りが弾けた。
「え、良い香り」
グラスに注ぐとシトリンーー黄水晶がカチンカチンとグラスの底に沈み、泡を出しながらビールに溶けた。たまらず一口飲むと苦味も少なく、口当たりがいい。
「これ、好きかも」
小さな発見に酔っていたら、母から札幌はもう雪が降ったとメッセージが来た。歳をとって酒の量が激減した父のガハハと笑う姿が今は何だか懐かしい。
ファンタジー
公開:23/11/12 19:12
クラフトビール
射谷 友里(いてや ゆり)と申します
十年以上前に赤川仁洋さん運営のWeb総合文芸誌「文華」に同名で投稿していました。もう一度小説を書くことに挑戦したくなりこちらで修行中です。感想頂けると嬉しいです。宜しくお願いします。
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