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潜酒服に身を包み、ビールタンクへダイブする。
情造サルベージはクラフトビールに欠かせない工程だ。発酵の段階で澱(おり)と一緒に沈んだ雑念を、潜酒士の僕がタンクの底から引き上げる。
苦心や辛酸、重圧。持てる技術と情熱を傾け、真剣にビールと向き合う間に、造り手の念や思い入れがタンクに溜まり、発酵と濃縮を繰り返す事で雑念と化す。
酵母や不純物はろ過できても、不純な気持ちまではろ過できない。雑念の残ったまま発酵が進めば、雑味の多いぼやけた飲み口になる。せっかく手塩にかけたビールが、文字通り残念な出来になってしまうのだ。
わずかな感覚を頼りに、特製のグラスで黒雲の様にわだかまる雑念を汲み取り、日の目を見せる。
気持ちの晴れ間と共に、視界ゼロの濁ったビールが黄金に冴え渡る瞬間は、毎回新鮮に感動する。
美味しいビールとお客様の笑顔のために。
グラスに輝く想いの結晶を返しに、再びタンクへ潜っていく。
情造サルベージはクラフトビールに欠かせない工程だ。発酵の段階で澱(おり)と一緒に沈んだ雑念を、潜酒士の僕がタンクの底から引き上げる。
苦心や辛酸、重圧。持てる技術と情熱を傾け、真剣にビールと向き合う間に、造り手の念や思い入れがタンクに溜まり、発酵と濃縮を繰り返す事で雑念と化す。
酵母や不純物はろ過できても、不純な気持ちまではろ過できない。雑念の残ったまま発酵が進めば、雑味の多いぼやけた飲み口になる。せっかく手塩にかけたビールが、文字通り残念な出来になってしまうのだ。
わずかな感覚を頼りに、特製のグラスで黒雲の様にわだかまる雑念を汲み取り、日の目を見せる。
気持ちの晴れ間と共に、視界ゼロの濁ったビールが黄金に冴え渡る瞬間は、毎回新鮮に感動する。
美味しいビールとお客様の笑顔のために。
グラスに輝く想いの結晶を返しに、再びタンクへ潜っていく。
その他
公開:23/11/11 20:01
クラフトビールコンテスト
創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
https://amzn.to/32W8iRO
ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。
【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞
いつも本当にありがとうございます!
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