幾星霜

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「星の声を聴きに行こう」
ロマンチックな誘い文句に惹かれ、夜の海へドライブに来た。

灰色に濡れた砂へ寄せては返す波の音。おぼろ雲が垂れ込めた空の下、彼の車が海岸線を辿って行く。
「星の砂というのね。綺麗な名前」
ガイドブックで調べてはあった。星型をした有孔虫の殻で、見付けると願いが叶うと言われる幸せのお守りだ。足元に広がる満天の星を想像しながら目をつむる。
「星の骨かも知れないな。億年の命を終えた星が、砕けて星屑になり、やがて宙へ還る」
ウィンドウから吹き込む肌寒い風に混じって、タイヤが砂を噛む音が響く。
潮騒が遠ざかり、車内を満たす星の声。砕け散る悲鳴なのか、始まりの産声なのか、星屑を撒いた道に二人きり、絶え間なく注ぐ声を聴く。

「目を開けて」
ざらついた指がまぶたに触る。
雲の切れ間から射し込む月光が、星の砂浜を銀色にきらめかせていた。
宙へ続く銀河の道を、車がゆっくりと走り出す。
ファンタジー
公開:23/03/15 19:09
プチコン 毎週ショートショートnote 星屑ドライブ

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞

いつも本当にありがとうございます!

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