恋

「強盗だ！手を上げろ！」
突如銀行にやってきたマスク姿の男は私にテッポウユリを突き付けました。
私は銀行員ではありません。ただの客です。それなのに何でこんな目に遭うのでしょう？
混乱する私は男の指示に従い両手を天井へと向けました。
「そのまま左手をこっちに向けろ！」
恐る恐る左手を男に向けます。何をされるのでしょう？
私の左手を見て、男はマスクを脱ぎ捨てました。
男の顔を見て、私は驚きました。男はかつて私が世界で一番愛した男性でした。
彼は私の左手を取ると薬指に指輪を嵌めてくれました。
「結婚しよう」
涙が零れます。その言葉を私はずっと待っていたのですから。
その様子を呆然と見つめる今彼。
頷く私を、彼は今彼から奪ってくれました。なあなあの関係を続けようとする今彼に私は見切りをつけました。
ごめんなさい。私、強引な人が好きなの…
元今彼にそう言い残し、彼に連れ去られた私は幸せになりました。