恋

直販所で売られいたスミレに儂は一目惚れをした。
今まで花になんぞ興味を持った事一度もない。だから購入したい気持ちはあるものの、育てられるか不安だった…
「スミレは寒さにも強く長く楽しめる花です。私、いつもこの時間には直販所にいるので、分からない事があったらいつでも聞きに来て下さい」
スミレの出品者の若者が儂に声をかけてくれた。それならやってみるか…

花を育てるのは子育てと一緒だ。花が少しでも弱るとこちらも不安になって来る。
「お父さん、大丈夫ですよ。それならすぐに元に戻ります」
アドバイスに従い、何度も危機を乗り越える。
若いながらも頼りになる若者だ。

その若者が娘の婚約者だと知った時、儂は驚きを隠せなかった。
「貴様にお義父さんなんて呼ばれる筋合いはない！」と言おうにも、儂は彼にずっと”お父さん”と呼ばれていた。
何より、儂も彼に惚れこんでしまっているんだ…認めないわけにはいくまい…