万化境
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旅先の民芸店に山積みになっていた。
「万華鏡か、懐かしいな」
千代紙の筒に覗き穴の付いた、昔ながらの万華鏡。回す度に変わる模様が面白くて、小さい頃は飽きずに半日でも覗いたものだ。
「万の境に化けると書いて、万化境(まんげきょう)と申します」
店主らしき白髪の老爺が一本差し出す。
童心に返って覗き込むと、穴の向こうに広がったのは、雲を浮かべた青空だった。
「ご用心を。一期一会の旅でございます」
どんな仕掛けなのか、筒の中で次々と景色が化ける。見渡す限りの花畑、のどかな田舎町、摩天楼の夜景に流氷の海。どれも本物と見まごう臨場感だ。
世界旅行気分で百ヶ所近く巡った頃、見覚えのある景色が視界を過ぎた。
半ば風化し、今にも崩れそうに古びた我が家。
カレイドスコープ――万華鏡の別名がふと浮かんだ。不吉な予感にかられ、万化境から目を離して頭を探る。
眼前に姿見があった。骨張った指に白髪が数本絡んだ。
「万華鏡か、懐かしいな」
千代紙の筒に覗き穴の付いた、昔ながらの万華鏡。回す度に変わる模様が面白くて、小さい頃は飽きずに半日でも覗いたものだ。
「万の境に化けると書いて、万化境(まんげきょう)と申します」
店主らしき白髪の老爺が一本差し出す。
童心に返って覗き込むと、穴の向こうに広がったのは、雲を浮かべた青空だった。
「ご用心を。一期一会の旅でございます」
どんな仕掛けなのか、筒の中で次々と景色が化ける。見渡す限りの花畑、のどかな田舎町、摩天楼の夜景に流氷の海。どれも本物と見まごう臨場感だ。
世界旅行気分で百ヶ所近く巡った頃、見覚えのある景色が視界を過ぎた。
半ば風化し、今にも崩れそうに古びた我が家。
カレイドスコープ――万華鏡の別名がふと浮かんだ。不吉な予感にかられ、万化境から目を離して頭を探る。
眼前に姿見があった。骨張った指に白髪が数本絡んだ。
ファンタジー
公開:23/03/12 18:26
プチコン
旅
創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。
【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞
いつも本当にありがとうございます!
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