涙にかえる

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 いつの頃からか世界中、ありとあらあゆる場所で子供たちが泣きやまない奇病が流行りだした。
 子供たちは泣いて泣いて、泣き枯れて、ミイラと化すまで泣いてしまうのであった。
 更に困ったことにはその奇病が蔓延するのと連動して世界中の海面という海面が上がりはじめた。
 水没する土地は増え、人が住める場所は極端に減った。
 しかしながら大人達は縛られたようにその地に留まり「子供達だけでも……」と残された高い土地に子供たちと、ミイラと化した我が子ら避難させ、自らは海の中に沈んでいった。
 子供たちはますます涙が止まらない。
 やがてこの世でただ一人の子供が泣き疲れ、ミイラと化す頃。
 世界はついに海に覆われた。
 地球は原始の姿へと戻ったのである。
 ミイラ化した子供たちは身体の芯まで海水にひたされ、充分に柔らかくなると、その身を突き破り、色とりどりの小魚の姿で新しい世界へ綺羅綺羅と旅立っていった。
公開:23/03/12 15:41

椿あやか( 猫町。 )

【椿あやか】(旧PN:AYAKA) 
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◆第18回坊っちゃん文学賞大賞受賞
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