ばいばい

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その公園は祖母の家の近くにあった。
母子家庭だったから、わたしは学校が終わると祖母の家に行き公園でよく一緒に遊んだ。公園の桜が咲くとお花見もした。祖母はブランコに乗るのが大好きで桜の花びらが舞うなか、嬉しそうにブランコを立ち漕ぎしていたのを今でも鮮明におぼえている。
「久しぶりにブランコに乗りたい」
祖母がそう言ったので、わたしは車椅子から祖母を立たせて何とかブランコに座らせた。
「ブランコってタイムマシンみたい。こうやって揺れてると、小さい頃に戻れるの。不思議ねえ、こんなにおばあちゃんなのに」
すると祖母の曲がった背中がみるみるうちにキレイな直線になり、その直線がすっと短くなって目の前に小さな女の子が現れた。
「おばあちゃん?」
わたしがそう言うと、その女の子はにっと笑ってばいばいって手を振って駆けて行った。
桜の花びらがふわりと風に舞う。
ブランコがゆっくりと揺れてきいと哭いた。
公開:23/03/12 11:49

杉野圭志

元・松山帖句です。

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