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引きこもりの僕のアパートに怪しげな女がやってきた。
「絵画旅行はいかがですか」
大きなカバンから、教科書で見たことあるような絵を見せてきた。
「この絵の中に潜り込むと、その世界に入り込むことができます」
床に平置きした絵の中に、熱い湯船に入るように足からゆっくりと入っていった。

トマトスープにずぶ濡れになったり、神様に会ったり、イルカと戯れた。

「最後にこちらはいかがですか」
上手とは言えない、3人家族が公園でピクニックをしている絵。
勇気を出してその絵の中に入った。
絵が下手すぎたが、両親だと分かった。
僕は子供だ。

あっという間に時間が過ぎ、現実に戻った。
「中にいられる時間は、この絵を描くのにかかった時間そのものです」
それはそうだ、夏休みの最終日に大慌てで描いたんだから。
「この絵、もらってもいいですか」

飾るのは恥ずかしかったから、机の一番下の引き出しに入れた。
ファンタジー
公開:23/03/13 16:59

空飛びペンギン( 関東 )

ご覧いただきありがとうございます。

俳優業の傍ら、趣味でショートショートを製作しています。
田丸先生の書籍を読んでから、楽しく作っております。
ご意見、ご感想いただけると嬉しいです。


名作文学の朗読Youtubeを行っています。
http://www.youtube.com/@akky_roudoku

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