たびぞら小包

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公園でシャボン玉を飛ばしてると、すべり台のてっぺんに赤い風船が着陸した。
下まで滑ってきた風船には小さい箱が結んであって、リボンをほどくと山のどんぐりが入ってた。
「すごいや。ぼくにくれるの?」
風船がうなずくみたいにふるんとゆれた。
両手いっぱいのどんぐりをもらい、お返しに特大のシャボン玉をふくらまして入れた。虹色に染まった箱にリボンをかけると、風船はまた空へ飛んでった。

「それは『たびぞら小包』ね」
うちに帰ったらママが教えてくれた。
「私が入れたのは、原っぱで見つけた四つ葉のクローバーだった。みんなのちょっと良いものをつないで旅をするのよ」


僕のシャボン玉はどんな空を旅したのだろう。誰のところへ届き、何を受け取ったのだろう。あの小包の行方を思いながら、今も窓越しの空に船影を探す。
いつかまた巡り会えたら、この光景を届けたい。
ツリーハウスの枝に実るどんぐりが、しゃらりと揺れた。
ファンタジー
公開:23/03/13 15:40
プチコン

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
前職は花屋。現在は葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書き(もどき)をしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.12執筆参加
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞。2022年6月アンソロジー出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞受賞

いつも本当にありがとうございます!

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