壺中天転

商店街の福引で観光用の壺中天が当たった。
『三等』の目録が付いた、梅干しでも漬かっていそうな瀬戸物の壺。三等では安いパッケージツアーだろうが、せっかくなので入ってみる。

中は案外広い。天井の高い壺庭はリゾートホテルの様な解放感。プールサイドに設えられた宴席でビアガーデンを楽しむ。壺入り酒と料理、壺型プールの中身も匂いからして酒だろう。まさに酒池肉林、飲み放題プランとは嬉しい限りだ。
豪華な料理と酒を心ゆくまで堪能した頃、新しい壺が卓上に現れた。
見覚えある瀬戸物の壺に、今度は『二等』と目録が貼ってある。試しにまた入ってみる。

中は案外広い。天井の高い壺庭は桃源郷のごとく花盛り。馥郁たる香りと鳥の囀りを愛でつつ壺に植わった桃林をそぞろ歩く。音も香りも随所に置かれた壺から発しており、そのどれもが『一等』だ。
次はどれを……ああここにもあった。

額に貼られた『特等』を剥がして頭蓋を取った。