冥土の土産
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「はい、今回のおみやげ!」
そう言って妻が差し出す土産と、それにまつわる土産話に耳を傾けるのが、里帰り旅行の恒例だ。
「今度は何の土なんだい?」
これが万年留守番の私の決まり文句。面倒が見られないからと生もの禁止令を出したら、旅行先の土を拾って来た。年の大半を離れて暮らす、砂を噛む様な味気なさの埋め合わせに、あえて砂を持ち込む酔狂な妻だ。
「冥王星の土。準惑星陥落記念」
「……それは記念すべき事なのかね。確か前回は、賽の河原の積み石だったか」
「代わりに地蔵の首を乗せてあげたわ。供養塔の完成第一号ですって」
相変わらず罰当たりで不謹慎で、毒と悪ふざけばかりの悪妻だ。結婚して永らく経つが、お蔭で飽きる心配だけはない。
「せっかくだから、また新しい苗木でも育てようか」
新物のザクロで帰還を労い、妻が吐き出した種を植えて鉢に仕立てる。
地上が眠りの冬に鎖される四半期、冥府は目覚めの春を迎える。
そう言って妻が差し出す土産と、それにまつわる土産話に耳を傾けるのが、里帰り旅行の恒例だ。
「今度は何の土なんだい?」
これが万年留守番の私の決まり文句。面倒が見られないからと生もの禁止令を出したら、旅行先の土を拾って来た。年の大半を離れて暮らす、砂を噛む様な味気なさの埋め合わせに、あえて砂を持ち込む酔狂な妻だ。
「冥王星の土。準惑星陥落記念」
「……それは記念すべき事なのかね。確か前回は、賽の河原の積み石だったか」
「代わりに地蔵の首を乗せてあげたわ。供養塔の完成第一号ですって」
相変わらず罰当たりで不謹慎で、毒と悪ふざけばかりの悪妻だ。結婚して永らく経つが、お蔭で飽きる心配だけはない。
「せっかくだから、また新しい苗木でも育てようか」
新物のザクロで帰還を労い、妻が吐き出した種を植えて鉢に仕立てる。
地上が眠りの冬に鎖される四半期、冥府は目覚めの春を迎える。
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公開:23/03/10 15:04
プチコン
旅
創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。
【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞
いつも本当にありがとうございます!
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