恋

昔はお茶を運ぶ茶番なんて仕事がありまして、これはそんな茶番の少女とその先輩のお話であります。
茶番の少女、まだ慣れていないのか茶を準備するのにとても時間がかかっておりました。
これでは旦那様を待たせてしまう。待たされると旦那様は不機嫌になる。
そこで先輩、時間稼ぎを買って出ました。与太話を持ち掛けては旦那様の気を引いたのです。
何せ噂では茶番の少女、旦那様の愛人候補らしいそうじゃないですか。愛人になるのは私だと息巻く先輩。
しかし先輩が旦那様の気を引くより先に、少女の茶の準備が整う方が早かった。
こうして旦那様は待たされる事なく美味い茶にありつけ、先輩の企みは失敗に終わりましたとさ。
失意の先輩。お暇を頂きますと店を出て行こうとするも、それを引き留めるは旦那様。
「儂は美味い茶より、お前の茶番が恋しいよ」と言われ先輩はまさに有頂天。
先輩は愛人にはなれなかったが、茶の席の恋人になれたとさ。