押して旅する男

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アルバムに街を挟んで旅をする。
ファインダー越しの補整された追憶より、肉眼と生身で切り取る今が好きだ。
手窓に収めた写真一枚分の空間を、帳面にプレスして持ち運ぶ。住めば都とはよく言ったもので、縮んで色褪せた風景も、旅を終える頃には平たく落ち着き、元からそこにあった様に時を刻みだす。
ワールドクロックの様に、同時進行で無数の旅を抱えながら、常に新しいロケーションを求めて世界をさすらう。

一ページに一カ所。旅から旅で押し集めた旅見本も終盤に近付き、ずっしりと持ち重りがする様になった。
最後の一枚を押し終えたら、今度は復元の旅を始める予定だ。
押した風景を切り取った場所へ運び、元通りにはめ込む。歳月の風はアルバムの中にも吹いているけれど、さぞかし奇妙で魅惑的なジェネレーションギャップが生まれるに違いない。

そして全部戻ったら、また一から押し旅を始めるのだ。
地球ごとパッチワークになる日まで。
ファンタジー
公開:23/03/09 19:37
プチコン インスパイア 江戸川乱歩『押し絵と旅する男』

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞

いつも本当にありがとうございます!

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