被安打ゼロの投手

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おれは魔球のような球を投げることができた。バットの芯を微妙にずらせて打者を打ち取るのだ。見送ってもストライクになる。天性の指先の器用さがあり投げることができるのだ。
プロの投手として三十試合投げて三十勝。しかも常にパーフェクトゲーム、たまに野手のエラーによるノーヒットノーランを全試合で達成するとあってはヒーローやカリスマを通り越して異物扱いとなってしまった。
連盟の偉い人から、あなたのような人がいると公明公正な世界であるべき野球界の秩序が乱れる。多額の退職金と大企業の席を用意するから、肩を壊したということにして引退してもらえないかと打診を受けた。
虚しくなったおれは引退することにした。だが大企業には入らず天性の指先の器用さを生かすためにマジシャンとなった。
野球界にいたのは一年だけだったが引退の打診以外にもドロドロしたものが見えた。それよりは人々を笑顔にする仕事に就くことができてよかった。
その他
公開:23/03/09 16:19

ぴろわんこ

少し変わった、ブラックな話が好きです。

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