恋

人間と狼が恋に落ちた。
一人と一匹は森の奥で愛を育み、結婚し、子どもを儲けた。
産まれた子供は母譲りの人間の肉体に、父譲りのクールな狼の面影…これが世界初の狼男の誕生である。
男はモテた。狼のように引き締まった細マッチョな肉体。多くの女性を虜にした。
だが男は狼として生きる事を選んだ。その姿を人々から隠すべく、母から譲り受けた赤い頭巾で顔を隠す。
男は狼の娘と恋に落ち、結ばれ、子どもを儲けた。
祖母の遺伝子だろう。生まれた子の中に人間そっくりな個体がいた。それが私だ。
だが私には当然狼の血も流れている。人間の体に大きな耳、大きな口、大きな目。この姿はとても人様には見せられない…見せていいのは私の夫と息子。それにお前だけだよ。赤ずきん。
今日もお見舞いありがとう。どうしたんだい？顔が赤いじゃないか？
えっ？さっきイケメンの狼に口説かれた？
…そいつ、送り狼にならなかっただけ評価してやるか…