最後

　「え？　今までで一番ヤバかった奴？　そうだな……」
　今まで沢山の死刑囚を処刑台まで案内した彼に質問してみた。
　「それは勿論あいつだったよ。あいつ以外いない」
　あいつと言うのは，日本の歴史史上最も残虐かつ無差別で快楽殺人者だった奴の事だと思う。
　「いくら悪い犯罪者でも，これから処刑されるっていきなり言われると，皆臆病になるもんなんだよ。泣いたり母ちゃんとか言ったりさ。やっぱ怖いんだな。人間なんだな。って思うんだよ！　でもあいつはこれから処刑って聞いて興奮しだして勃起したんだよ」
　「それで我慢できないとか言って，皆が見てるのに自慰行為し始めたんだ。人生で一番興奮した日だ。とか言って」
　「処刑台に立たされて，死ぬまでずっと奴はずっと勃ったままだったよ。あんな人間とは思えないような感覚の奴は沢山の死刑囚を見てきたけど，あいつだけだったよ」

　彼はソーセージを食べながらそう答えた。