本とコーヒーをデイバッグに詰め込んで

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 何も予定のない休日ほど早く目が覚めてしまう癖がついた。二度寝が出来ない性質で、仕方なく布団を抜け出すとトーストを焼き二人分のコーヒーを淹れる。
 トーストを齧りながら読みかけの小説を手に取ったが、ふと、この本の舞台となった町まで出かけてみようと思い立ち、妻のために淹れたコーヒーをマグボトルに移すと本と共にデイバッグに詰め込んだ。

 電車に揺られ、本を読み終える頃に着いたこの町に作者は上京するまで住んでいたらしく、主人公とのちに妻となる女性との思い出の地として実際の風景や店が多く描かれている。時々本を取り出しながら町を歩いていると小さな川に架かる石橋が見えてきた。
 主人公と死んだ妻との再会の場所。本に描かれたのと同じ夕暮れまで待つと誰かに呼ばれた気がして振り返るも誰もおらず、そのまま帰路に就いた。

 部屋の灯りをつけるとテーブルの妻の写真に途中で買った缶コーヒーを置いた。そんな休日。
その他
公開:23/03/11 01:01
更新:23/03/11 06:04

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