恋

私は昔からおてんばで、じっとしていられなかった。
走るのが大好きで、よく家中を走り回っていた。
私が走るとお母さんは「静かにしなさい！捨てるわよ！」って怒る。凄く怖い…
私はお母さんの子どもじゃないから愛してくれないんだ…悲しくて、涙が出る。
そんな私をお兄ちゃんはそっと抱きしめてくれた。私を膝の上に乗せて、本を読んでくれた。
お兄ちゃんはお母さんの子どもで、私とは血が繋がっていない。
私はお兄ちゃんが大好き。血が繋がっていないのなら将来結婚できるかも！と思っていた。
でも、それは無理だった。お兄ちゃんは時間と共に大人へと成長していく。
私はいつまで経っても日本人形のまま…魂が宿ったとはいえ、人間みたく大きくなれない…
私の想いは失恋へと変わった。お兄ちゃんは人間の女性と結婚して、お父さんになった。
私はそんなお兄ちゃんの家族を見守る。恋しい気持ちはいつしか愛おしい気持ちへと変わっていた。