シャベル

　俺は今，シャベルで穴を掘っている。人間一人が丁度埋められる程の穴を豪雨が降る中後ろから拳銃を突きつけられながら掘る。
　なんで俺が今こんな状況になっているのかは全く分からない。何故なら思い当たる節が一つもないからだ。つまりは勘違いの冤罪だ……
　俺自身が今感じているのは，この穴が掘り終わったらきっと殺されるという事だけだ。だから少しでも時間をかけて俺はシャベルで掘り続ける。
　「おいお前早く掘れよ！　俺はそんなに暇じゃねぇんだよ！」
　俺は背中を蹴られ急かされる。
　拳銃を持った男の携帯の着信が鳴る。
　「はい？　え！？　本当ですか？　分かりました……」
　その拳銃を持った男から見下ろされながら一言言われた。
　「良かったなお前。帰っていいとよ！」





　俺は九死に一生を得た。