羽のばし
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「骨休めが必要です。羽をのばして下さい」
医者から処方された薬袋には、算数の-(マイナス)が入っていた。
道理でやたら天使が目立つわけだ。これ以上働き過ぎて本当に天に召される前にと、もらった-を背骨に差し込む。骨のほの字から横棒が1本抜け、ハメの外れた肩甲骨が開いた。
どんな羽がのびるだろう。うきうき想像を巡らし羽化を待つ。
鳥の羽、虫の翅、機械仕掛けの鉄の羽根。コウモリ羽や紙飛行機のつばさも良い。うんと遠くへ飛んで、気ままな骨休め旅に出るのだ。
ぐんぐんのびた想像の羽は空一面を覆い、大気圏を突き破った。
太陽熱が直接当たり、とけた羽が蝋の雨になって降り注いだ。無念、イカロスの翼だったか。骨組みの残骸を引きずりながら町を歩く。
町外れの野原に群れるタンポポが、午後の風に種を飛ばしている。
掌を組んで背伸びすると、骨についた綿毛が羽ばたいた。
足が宙に浮き、新天地を目指して舞い上がった。
医者から処方された薬袋には、算数の-(マイナス)が入っていた。
道理でやたら天使が目立つわけだ。これ以上働き過ぎて本当に天に召される前にと、もらった-を背骨に差し込む。骨のほの字から横棒が1本抜け、ハメの外れた肩甲骨が開いた。
どんな羽がのびるだろう。うきうき想像を巡らし羽化を待つ。
鳥の羽、虫の翅、機械仕掛けの鉄の羽根。コウモリ羽や紙飛行機のつばさも良い。うんと遠くへ飛んで、気ままな骨休め旅に出るのだ。
ぐんぐんのびた想像の羽は空一面を覆い、大気圏を突き破った。
太陽熱が直接当たり、とけた羽が蝋の雨になって降り注いだ。無念、イカロスの翼だったか。骨組みの残骸を引きずりながら町を歩く。
町外れの野原に群れるタンポポが、午後の風に種を飛ばしている。
掌を組んで背伸びすると、骨についた綿毛が羽ばたいた。
足が宙に浮き、新天地を目指して舞い上がった。
ファンタジー
公開:23/03/07 19:19
プチコン
旅
創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。
【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞
いつも本当にありがとうございます!
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